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アプリ内リターゲティングがUA戦略を補完する仕組み

ユーザー獲得はパズルの小さなピースにすぎない

アプリ事業者が懸念するトップレベルの指標の1つは、インストールと新規ユーザーの獲得量です。アプリのインストール率は、企業にとっても(そして投資家にとっても)、自社製品の需要を把握するのに役立つので重要です。アプリの新規インストール数が多ければ、そのアプリが広くブランド認知を獲得し、製品・市場に強くマッチしていることを示す良い指標となります。

成長見込みを明示することは、ビジネスとして成立していることを証明する重要な第一歩であり、そのためアプリはユーザー獲得(UA)キャンペーンにマーケティングリソースを集中させることが多いのです。インストールと登録のプロセスは、セールスファネルの重要なステップであるため、インストールと新規ユーザーの一定の流れを確保することは理にかなっています。しかし、ユーザーを獲得しても、そのユーザーが購入に至るか、あるいはアプリを利用するかまでは保証されません。AppsFlyerの最新レポートによると、2022年には、ダウンロード後30日以内に49%のアプリがアンインストールされ、そのうちの約半数がわずか24時間以内にアンインストールされていることが判明しました。

製品のタイプや 業界によって異なるかもしれませんが、平均的な購入には少なくとも7つのマーケティングタッチポイントが必要であると言われています。RemergeのPrincipal Account ManagerであるEkaterina Liは、イスタンブールで開催されたMobidictum Conferenceでこのように説明しました。「ユーザー獲得はそれだけでは十分ではありません。多くの調査では、デイリーアクティブユーザーの約90%が、アプリをインストールしてから7日以内に離脱してしまうことが明らかになっています。つまり、初日から堅実なリテンション戦略を策定しなければ、UAへの投資は大きな効果をもたらさないでしょう。」

« アプリ内のユーザーを維持することは、新規インストールを獲得するよりも安く、費用対効果が高いのです。 »

Kate Taganova, director of sales for EMEA

フルファネルマーケティング戦略とは何か、リターゲティングはどこに位置づけられるのか

デジタルやアプリを使ったビジネスの典型的なマーケティングファネルは、通常、潜在顧客にブランドを知ってもらうための一般的な認知度向上キャンペーンから始まります。ブランドの認知度を高めることが目的であるため、このメッセージングでは必ずしもCTA (Call to Action) が必要ではありません。ファネルの次のステップは検討ステージで、広告はオーディエンスに対し、提供できる製品・サービスをチェックするように促します。オーディエンスの中には、ランディングページをクリックして詳細を確認したり、購入に踏み切る人もいます。このようなユーザーの行動に関するデータが、最終ステージであり最も重要なリターゲティングの戦略に反映されるのです。

ファネル上部向けの広告キャンペーンで、潜在ユーザーと既存ユーザーの双方から一貫したエンゲージメントが得られるようになったら、次はリターゲティング広告の実施に焦点を移すことができます。リターゲティング広告を見た人は、すでにその企業のブランドを知っているので、よりカスタマイズされたメッセージで、ファネル下部で発生する特定の(そしてしばしば)コンバージョン狙いのアクションをユーザーに促すことができます。例えば、以前見た商品の購入や、ロイヤルティの高いリピーターであることへの報酬として割引の提供などがそれに当たります。

最終的に、リターゲティング広告配信の対象となるユーザーは、自社の製品を知らないユーザーよりも購入に至る可能性が高いため、最も価値のあるユーザーの一人となります。この意味で、リターゲティングキャンペーンは、離脱を減らし、収益を上げ、ユーザーのLTVを高めるため、UA戦略を補完するものであると言えるでしょう。しかし、リターゲティング広告は、タイミングが重要であることも知っておく必要があります。アプリを使ったビジネスの場合、最後のタッチポイントから7日以上経過したユーザーへのリターゲティングは、効果を期待するにはすでに遅すぎると考えられています。

リターゲティングが重要視される理由

RemergeのDirector of Channel AlliancesであるSteve Massaroは、Drum Magazineで次のように解説しています。「新規ユーザーは、さまざまな場所でファネルから外れてしまう可能性があります。最近アプリをインストールした人が、登録プロセスを完了しないかもしれません。もしかしたら、商品を入れたにも関わらずカートを放棄したり、一度だけ購入した後、そのブランドと関わりを持たなくなったりするかもしれません。これらのステージすべてに対応したキャンペーンをテストし、反復(イテレーション)することが、ユーザーをセールスファネルにうまく誘導し、購買を継続させる鍵だと言えるでしょう。」

また、リターゲティングについては、その有効性を立証する報告も数多くあります。ある調査によると、リターゲティングキャンペーンが配信されたユーザーは、リターゲティングされなかったユーザーと比較して、インストール後30日間のエンゲージメント率(1ユーザーあたりのApp内イベント数)が全体で152%高くなったとのことです。インストール初日にリターゲティングされたグループのエンゲージメント率は200%に達し、さらに高い数値を示しています。それだけでなく、最初の30日間で、リターゲティングされていない人に比べて、平均37%も多くの収益イベントが発生していることも明らかになっています。

ベルリンで開催された2022 App Promotion Summitで、このテーマについて、RemergeのDirector of Sales for EMEAであるKate Taganovaは次のように解説しました。「予算が削減されている今、できるだけ賢く予算を投入し、クライアントに付加価値をもたらすことがこれまで以上に重要です。実は、アプリ内のユーザーを維持することは、新規インストールを獲得するよりも安く、費用対効果が高いのです。特に成熟したアプリの場合、インストールあたりのコスト (CPI) は高くなる一方です。」

App Promotion SummitでのKate Taganova

まとめ

説得力のある調査結果を踏まえると、新しく獲得したユーザーの大半は、統計的にロイヤルティの高い長期的なユーザーになる可能性が低いため、ユーザー獲得キャンペーンは、一時的で短期的なビジネスの成功にしかつながらないというのは、当たらずとも遠からずです。リターゲティングキャンペーンをモバイルマーケティング戦略に組み込むことで、ロイヤルティの高いユーザーを特定し、離脱の可能性を減らし、全体のLTVを高めることができるーつまり、Steve Massaroの言葉を借りるのならば、「売上収益とROASの鍵」なのです。