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プライバシーサンドボックス:RemergeとVerve Groupがオンデバイス入札をテスト

モバイル業界は、プライバシー重視の未来に向かっているため、プログラマティックアプリ内広告の仕組みもそれに合わせて急速に変化しています。GoogleのAndroid向けソリューションは、プライバシーサンドボックスのイニシアチブの一つで、サードパーティ間でユーザーデータを共有することなく、アプリ内広告をデバイス上 (オンデバイス) で売買、ターゲティングできるように設計されたAPIセットです。

これは要するに、業界関係者全てをプライバシーファースト時代へとスムーズに移行させるよう、パブリッシャーアプリの広告在庫を販売するサプライサイドプラットフォーム (SSP) と、広告主向けに広告在庫を買い付けるデマンドサイドプラットフォーム (DSP) とが技術スタックを再構築しなければならないことを意味します。このAndroidでの変更に対し、RemergeとVerve Groupは、プライバシーサンドボックスの構築とテストにおいてGoogleと協力した最初のモバイルDSP/SSPパートナーシップの1つです。

オンデバイス入札の進捗状況について、またセルサイドとバイサイドの両方から業界の見解を得るために、Verve GroupのHead of Mobile ProductであるGaylord Zach氏と、RemergeでAndroid上でのプライバシーソリューションを担当するProduct ManagerのLuckey Harpleyの話を記事にしました。

プライバシーサンドボックスをテストする最初のモバイルDSP/SSPパートナーシップとして、RemergeとVerve Groupで行ったこれまでのプロセスとテストはどのようなものだったのか?

Gaylord Zach氏 (以降Zach):その目的は、具体的にはRemergeのDSP機能とVerve GroupのオンデバイスSDKを活用し、プライバシーサンドボックス技術と実際のユースケースとの連携を模索することでした。従来、広告の連携にはシンプルなプロセスが必要でしたが、プライバシーに焦点を当てたテクノロジーの出現により、私たちの新たな目的は、プライバシーを保護する方法で広告が配信されることを保証することです。Verve Groupはサプライサイドで必要なコンポーネントを開発し、Remergeはバイサイドに対応しました。

Luckey Harpley (以降Harpley):サンドボックスのProtected Audience API (PaAPI)を使用し、シングルセラー・シングルバイヤーのオークションをデバイス上で行うテストをセットアップしました。エミュレートされたデバイスと、Verve GroupのテストアプリとSDKを使用して、Custom Audience Delegationを介して、デバイスをRemergeのカスタムオーディエンスに参加させました。Verve Groupがオークションを開始し、Remergeが落札したため、Verve GroupのSDKを介したバナー広告のレンダリングが成功しました。

テストは技術的な観点から見てどうだったのか、目的は何だったのか?

Zach:テストは、開発環境内でエミュレートされたデバイスを使用して実施されました。これらのエミュレーターはAndroidデバイスの動作をシミュレーションするもので、物理的なハードウェアを必要とせずにテストや開発を行うことができます。開発環境では、Androidデバイスを模したウィンドウがあり、そこでエミュレートされたデバイスが動作します。このセットアップにより、RemergeのDSP機能とVerve GroupのオンデバイスSDKの連携についての初期テストと検証が可能になりました。次のステップでは、エミュレーターでのテストから実機でのテストに移行することになるでしょう。

また、PaAPI内での「フリークエンシーキャップ」に対応する取り組みも開始しました。広告IDがないため、実際のユーザー情報が入手できず、バイサイドでフリークエンシーキャップを実施するには困難が伴います。したがって、広告配信の効果的なコントロールと管理を保証するために、フリークエンシーキャップはデバイスレベルへと移行される予定です。

業界内のどのような変化が、こうした取り組みに投資することにつながったのだろうか?

Zach:以前は、ユーザーデータは分析のためにバイヤーに送られていました。しかし、こうした新しいプライバシーテクノロジーによって、データはよりローカライズされるようになり、アドテク関係者はモデルアーキテクチャを再考し、オンデバイスや別の信頼できる実行環境(Trusted Execution Environment:TEE)内でどのようなプロセスを実行すべきかを決定しなければならなくなります。オークションがサーバーからデバイスや他のTEEに移行するにつれ、モバイル広告の状況は大きく変わりつつあります。

過去15年間、モバイル広告を中心に、プラットフォーム機能やユーザーデータ、特にターゲティング意思決定のための広告IDを活用した数多くのビジネスモデルが登場してきました。しかし、GoogleがIDを段階的に廃止し、デバイス上でのデータ処理を推進することで、従来のモデルは時代遅れのものとなるでしょう。このような変化を受け入れるイニシアチブへの投資は、データプライバシーとユーザー中心のアプローチが優先される世界で、企業が適応し成功するために不可欠です。

Harpley:プライバシー重視の広告がAndroidにおけるリターゲティングとユーザー獲得の未来になることを考えると、プライバシーサンドボックスをいち早く採用することは、長期的な成功につながります。こうした取り組みに早急に投資することは不可欠です。なぜなら、私たちがクライアントに提供するサービスを中断することなく、プライバシーサンドボックスの開発を推進する上で積極的な役割を果たすことができるからです。また、Googleと協力することは、業界のニーズを支持し、これらの要求が機能として具体化するのを見ることができることを意味します。

テストが実施されるにあたり、広告主が知っておくべきことは?

Harpley:エンドユーザーデバイスでのライブトラフィックテストは、2024年後半に実施される予定です。そのため、現時点では、広告主は、最新のプライバシー動向に注意を払い、調査を行い、Verve GroupやMMP (AppsFlyerなど) といった主要な業界関係者と緊密に連携しているRemergeのような広告パートナーと協力して、Android上でGoogleのプライバシーサンドボックスをテストし、採用する必要があります。プライバシーサンドボックスの実装後、広告主がSDKをアップデートし続ける限り、アプリ内広告はこれまで通り機能するはずです。ご質問やご相談があれば、Remergeチームまでご連絡ください。私たちはいつでも喜んで皆様をサポートします。

SSPの観点から見る変化、パブリッシャーアプリへの影響は?

Zach:これまでのワークフローは、広告リクエストをVerve Groupの広告サーバーに送り、広告サーバーが複数のバイヤーに広告リクエストを送信し、オークションを行い、結果をSDKに返すというものでした。しかし、新しいテクノロジー (特にオンデバイスオークションや他のTEE内でのオークション) の採用により、プロセス全体が大きく変化していきます。新しいセットアップでは、Verve Groupがオークションを開始することに変わりはありませんが、実際のオークションプロセスはユーザーのデバイス上で行われるようになります。

その結果、Verve GroupはSDKとバックエンドプロセスの更新という大仕事を担い、変更に対応するために複数のステップに分割しています。しかし、これらの変更がパブリッシャーに直接影響するものではないことが重要です。パブリッシャーは、自社のSDKとモバイル計測パートナー (MMP) に関連するSDKを更新するだけでいいのです。そこからは、これまで通り広告をリクエストすることが可能になります。

RemergeとVerve Groupの「入札概念実証」テストは、Androidプライバシーサンドボックスの開発と実装にどう影響するのか?

Harpley:DSP/SSPのパートナーシップとしては、2つの独立した企業がオンデバイス入札を成功させることができるという証拠となるため、エキサイティングな第一歩です。これは業界関係者全員にとって素晴らしい検証です。私たちの製品が機能することを証明するだけでなく、プライバシーサンドボックスのAPIも機能していることを示すものであり、アプリ内リターゲティングがプライバシーファースト時代に発展を続けられる証拠なのです。

Zach:私たちにとって、このテストはイノベーション、プライバシー、業界の進歩に向けた共同開発の象徴です。テストの成功は、プライバシーサンドボックスのテクノロジーを実世界のアプリケーションに統合することの可能性を示しています。将来を見据え、テクノロジーが進化するにつれて、私たちはユーザーのプライバシーとユーザーエクスペリエンスを優先するソリューションの開拓にコミットし続けます。

OpenRTB (リアルタイム入札) での入札とはどのような類似点があるのだろうか?

Zach:広告IDがない場合でも、OpenRTB経由のコンテクストビッド (入札) リクエストでオークションプロセスを開始します。これらのリクエストは、Protected Audiencesをサポートするシグナルになります。ビッドレスポンスは、バイヤーにとっては、保護された (非公開の) オークションのデータと入札ロジックをリモートで提供する機会として機能します。OpenRTBは私たちのプロセスの重要なコンポーネントであることに変わりはありませんが、その機能は、広告配信とオークションのダイナミクスへの包括的なアプローチを保証する、追加のロジックを組み込むために進化していくでしょう。

AndroidプライバシーサンドボックスAPIとの連携はこれまでどうだったのか、またその成果はどうなのか。

Zach:AndroidプライバシーサンドボックスAPIを使った取り組みは、かなりの冒険でした。まだ初期段階であり、広く採用されているわけではありませんが、未知の領域を探索することにはある種のスリルがあります。確立されたベストプラクティスや広範なデバッグ経験はまだないかもしれませんが、このテクノロジーがユーザーのデバイスに届く頃には成熟していると確信しています。

Harpley:ソフトウェアエンジニアリングの観点からは興味深い挑戦でした。この領域は明確に定義されており、イノベーションを起こすための土俵はある程度平等です。製品自体にはまだ改良の余地があり、細かいディテールの多くはまだ定義されていませんが、Googleは業界を理解し、私たちのフィードバックを取り入れようと懸命に取り組んでいます。このような重要なプロジェクトに参加していることは楽しいですし、また、実現することを楽しみにしています。