ナビゲーションにスキップ メインコンテンツにスキップ

プログラマティックアプリ内リターゲティング広告完全ガイド

Remergeによるモバイルアプリビジネス事業者とデジタル広告代理店のためのガイド

コンテンツ

  1. アプリ内リターゲティングとは?
  2. アプリ内リターゲティングのメリットとは?
  3. アプリ内リターゲティングの仕組みは?
  4. プライバシーファースト時代のリターゲティング
  5. リターゲティングパートナーを選ぶポイント
  6. プログラマティックリターゲティング広告を始めるには
  7. 広告クリエイティブのベストプラクティス
  8. セグメンテーションのコツと戦略
  9. ダイナミックプロダクト広告によるパーソナライズ
  10. Remerge各拠点のリーダーによるリターゲティングのインサイト
  11. まとめ

1. アプリ内リターゲティングとは?

アプリ内リターゲティングは、既存ユーザーに対して適切な広告を配信することで、アプリ内でのアクションを促すモバイルマーケティング手法です。これらの広告は、ユーザーが日常的に利用している他のモバイルアプリ内に表示されます。ユーザーごとに付与される一意のデバイスIDをはじめとする行動データを活用することで、個々のユーザーを特定し、その利用状況に応じたパーソナライズされた広告を配信することが可能になります。これにより、ユーザーのアプリ内での行動ステージに合わせて、的確なアプローチを取ることができます。このガイドの3章では、アプリ内リターゲティングがどのように技術的に機能するのかを詳しく解説するとともに、モバイル広告のエコシステムにおける主要プレイヤーについてもご紹介します。

アプリ内リターゲティング広告には、以下のような活用方法があります:

  1. 新規ユーザーに対して:登録や初回購入など、重要なアクションの完了を促す
  2. 休眠ユーザーに対して:再度アプリに関心を持ってもらい、再訪や購入へとつなげる(リエンゲージメント)
  3. 既存の有料ユーザーに対して:新機能の案内や、オファー・プロモーションを通じたアップセルを図る

2. アプリ内リターゲティングのメリットとは?

アプリベースのビジネスを運営している場合、アプリ内リターゲティングは、長期的かつ持続可能な成長戦略に欠かせない要素です。過去にアプリをダウンロード、使用、または購入したことのあるユーザーに対して、個別に最適化された広告を表示することで、エンゲージメント、リテンション、収益を高めることができます。

誤解されがちな「新規ユーザーは自然に定着する」論

「新規ユーザーには、ある程度時間が経ってからリターゲティングすべきだ」という考え方は、マーケターの間でも広く信じられています。これは、「彼らは自然とコンバージョンに至る可能性が高い」という前提に基づいています。しかし、現実には、アプリをインストールした大多数のユーザーは、その存在をすぐに忘れてしまい、最終的にアンインストールしてしまう可能性が高いのです。こうした統計データについては、以下で詳しく見ていきます。


このような背景から、ユーザーのリテンション率を改善するには、ユーザーがアプリをインストールした初日から、よく練られたリターゲティング戦略でUAキャンペーンを補完することが不可欠です。これによりアプリ内のエンゲージメントを高め、ユーザーとの接点を継続的に維持することができます。新規ユーザーがリターゲティングキャンペーンに含まれている場合、アプリ内で課金したり、長期的に利用し続けたりする可能性が大幅に高まります。たとえば、ある調査では、リターゲティングされたユーザーのエンゲージメント率は、リターゲティングされていない新規ユーザーと比べて全体で152%も高かったという結果が示されています。

リターゲティングがアプリ成長に不可欠な理由:

1. リターゲティングはユーザー獲得(UA)戦略を補完する

すべてのアプリグロースキャンペーンはUA(ユーザー獲得)から始まります。アプリのローンチ段階では、インストール数やアカウント登録、新規ユーザーのアプリ利用を促進することが主な目的です。UAにおいては、マーケターは大規模なユーザーベースの構築と、インストール単価(CPI)を基準とした広告費の最適化に注力します。しかし、こうした要素だけに注目してアプリのマーケティング戦略を立てるべきではありません。

たしかに、より多くのユーザーを獲得することはアプリのグロースに必要ですが、アプリマーケターは同時に、そのユーザーがインストール後もアプリを利用し続けているかどうかを把握する体制も整える必要があります。アプリの長期的な成長戦略の目的は、ユーザーの顧客生涯価値(LTV)を高めることであり、それにはユーザーが離脱する前にリターゲティングキャンペーンを開始することが欠かせません。


あるレポートによれば、2022年にはインストールされたアプリの49%が30日以内にアンインストールされ、そのうち約半数が24時間以内にアンインストールされていました。この件について、Remergeのプリンシパルアカウントマネージャー (Principal Account Manager) であるエカテリーナ・リ (Ekaterina Li) は、イスタンブールで開催されたMobidictumカンファレンスで次のように語っています:「ユーザー獲得だけでは十分ではありません。多くの調査で、アプリをインストールしたユーザーの約90%が7日以内に離脱すると報告されています。ですから、初日から強固なリテンション戦略を構築しなければ、UAへの投資はほとんど意味をなさないのです。」

2. リターゲティングは既存ユーザーの価値を最大化する

モバイルアプリはグロースのために常に新規ユーザーを必要としますが、既存ユーザーの維持と育成にはリターゲティングキャンペーンが不可欠です。リターゲティングでは、すでにアプリをインストールし、なんらかの使用経験があるユーザーを対象にするため、広告が促すアクション(例:登録の完了、ゲームの新ステージの解放、アプリ内購入、その他のコンバージョン)までのプロセスが比較的短くて済みます。

また、保有するファーストパーティデータによって、ユーザーがアプリ内でどのように行動しているかが把握できます。これらのインサイトをもとに、洗練されたオーディエンスセグメントを構築することで、よりパーソナライズされた広告体験を提供し、コンバージョンの目標達成に近づけます。

3. リターゲティングはブランドリコールを促進する

リターゲティングは、ユーザーの記憶の中に自社ブランドを定着させる助けとなります。これはユーザーの維持を実現するための第一歩です。リターゲティングによってブランドリコール(brand recall)が確立されると、ユーザーはそのアプリに親しみを感じるようになり、今後そのアプリと関わる可能性が高まります。ユーザーがアクションを起こす準備が整ったタイミングでアプリを思い出してもらえるよう、継続的に認知を促進することは、コンバージョンの確率を高めるうえでも重要です。

4. リターゲティングは収益を促進する

この調査によれば、リターゲティングされたユーザーは、インストール後最初の30日間において、収益イベントの発生数が平均で37%多いと報告されています。また、既存ユーザーをリエンゲージメントする方が、新規ユーザーを獲得するよりもコスト効率が高い傾向にあります。事実、新規ユーザーの獲得には、既存ユーザーのリエンゲージメントにかかるコストの5〜10倍かかる場合もあります。

さらに、リターゲティング広告はアップセルキャンペーンにも活用できます。アプリ内での有料コンテンツ、プレミアムサブスクリプション、新機能などの特典やメリットをロイヤルユーザーに訴求するチャンスにもなります。

Remergeのようなリターゲティングパートナーは、アプリ内データを活用して、高課金ユーザーと低課金ユーザーをアクティビティベースでセグメント化し、それぞれに最適な広告オファーを配信することが可能です。

5. リターゲティングは他のアプリ内コンバージョン目標の達成にも役立つ

アプリがある程度成熟していたり、競合が激しい市場で展開していたりする場合、UAだけでは成果を出しにくくなります。こうしたケースでは、他の目的を達成する手段としてリターゲティングに投資する価値があります。スマートフォンユーザーは、かつてないほど多くの時間とお金をアプリに費やしています。たとえば2021年には、平均的なユーザーが1日あたり4.8時間をモバイル端末で過ごし、アプリ市場全体では1,700億ドル以上の支出がありました。リターゲティングは、こうしたユーザーとの接点を確保し、セールスファネルの次のステージへと導くツールとして機能します。

その他のコンバージョン目標には、以下のようなものが挙げられます:

  • ユーザーが放棄したショッピングカートやフード注文の完了を促す
  • 無料トライアル終了後に、有料サブスクリプションへの登録を勧める
  • モバイルゲーマーに対して、新キャラクターや新ステージの解放を促し、エンゲージメントとロイヤリティを強化する

3. アプリ内リターゲティングの仕組みは?

アプリビジネスを展開している場合、すべてのユーザーには固有のデバイスIDが付与されます。ユーザーがアプリ間のデータ共有に同意していれば(第4章で詳しく説明)、そのデバイスIDを使って、他のアプリでのユーザーのアクティビティを追跡することが可能になります。そして、そのアプリが広告枠を提供していれば、あなたのアプリの広告をそこに配信し、既存ユーザーをリターゲティングできるのです。こうした広告を「他のアプリの中で自社ユーザーに見せる」仕組みは、モバイル広告エコシステムを構成する複数のプレイヤーによって支えられています。

プログラマティックモバイル広告の主要プレイヤー

1. 広告主
広告主とはあなたのことです。自社アプリの製品やサービスを他のアプリ内に広告として掲載しようとするアプリ事業者です。

2. パブリッシャー
広告枠を提供し、広告主がそこに広告を掲載できるようにするアプリのことを「パブリッシャー」と呼びます。広告を表示・配信する側だからです。

3. SSP(サプライサイドプラットフォーム)
サプライサイドプラットフォーム(SSP)は、パブリッシャーと連携して、アプリ内の広告枠を販売できるようにする役割を担っています。パブリッシャーアプリにおいて、特定のユーザーに広告を表示する機会が発生すると、SSPはそのユーザーが誰であるか、どのような種類の広告枠が利用可能であるかといった情報を受け取ります。そして、SSPはその広告機会(いわゆる入札リクエスト/bid request)をオークションに出し、最も高値を付けた入札者にその枠を提供します。

4. DSP(デマンドサイドプラットフォーム)
デマンドサイドプラットフォーム(DSP、例:Remerge)は広告主のモバイル広告パートナーです。DSPは広告主とSSPの仲介役として機能し、SSPが提供する広告枠に対して入札を行います。この際、DSPは広告主のクリエイティブやコピーを添えて入札オファーを提出します。DSPがオークションに勝利した場合、SSPはその広告を、対象ユーザーが閲覧しているパブリッシャーアプリ内に表示します。

5. MMP(モバイル計測パートナー)
モバイル計測パートナー(MMP)、またの名をアトリビューションプロバイダーは、すべてのプレイヤーと連携する中立的なサードパーティです。パブリッシャーのアプリ上での広告パフォーマンスを測定し、広告主やDSPと連携して、ユーザーが広告をクリックしてからアプリ内で取った行動をトラッキングします。

リターゲティングの仕組み

リターゲティングは、ユーザーがアプリを初めてダウンロードした瞬間から始まります。ユーザーがアプリを開くと、そのセッションが記録され、デバイスIDが判明します。MMPとの連携により、アプリ内のユーザー行動データ(=イベントストリーム)を収集できるようになります。例えば、以下のようなアクションが記録されます:

• 閲覧または購入した製品/サービス
• サブスクリプションや登録プロセスの進捗
• ゲームで到達したレベル

これらのデータはDSP(リターゲティングパートナー)に送られ、そこからユーザーごとのカスタマイズ戦略が構築されます。

リターゲティングパートナーは、あなたから共有されたイベントストリームを分析し、キャンペーンの目標に基づいてユーザーセグメントを構築します。そして、複数のSSPネットワークを活用して、ターゲットユーザーが他のアプリを使用している最中に、広告を表示します。これらの広告には、ディープリンクとCTA(行動喚起)が組み込まれており、ユーザーがクリックすると、アプリ内の特定の場所―たとえばアカウント登録の完了ページや購入画面など―に直接遷移させることができます。

このリターゲティングプロセスを成立させるためには、アプリがMMPと連携している必要があります。MMPは、アプリ内イベントデータを収集し、それを「ポストバック」形式でDSPに共有します。選定したDSPはこのデータを活用して、キャンペーンの目標に応じたユーザーセグメンテーションをさらに精緻化します。

リターゲティングの基本的なステップ

リターゲティングキャンペーンを実施するための基本的なステップを詳しく見ていきましょう。

STEP 1:イベントストリームの有効化

MMPのダッシュボードからDSPへのイベントデータ転送(event forwarding)を有効にします。また、MMPのSDK(ソフトウェア開発キット)をアプリに実装する必要があります。これにより、すべてのユーザーイベントがDSPに届き、ユーザープロファイルの構築が可能になります。

STEP 2:広告クリエイティブとディープリンクの準備

次に、DSPに入札用の広告クリエイティブを提供します(入札詳細はSTEP 4)。バナーや動画など、使用するフォーマットに応じたクリエイティブを準備します。DSPによっては、Remergeのようにクリエイティブ制作チームをインハウス化しており、依頼することも可能です。

あわせて、広告クリック時にユーザーをアプリ内の目的地に直接誘導するディープリンクも提供します。

STEP 3:セグメンテーション

どのユーザーをリターゲティングするかを定義します。DSPは条件に応じてユーザーをセグメント化します(例:購入済ユーザーと未購入ユーザー)。これにより、目的に応じた複数のキャンペーンが設計可能です。

STEP 4:リアルタイム入札(RTB)

SSPは、自社アプリ内で広告枠を提供し広告収益を得ようとする何千ものアプリに対して、独自のSDKを統合しています。アプリ内で広告を表示するチャンス(広告枠)が発生すると、SSPはその広告を見る対象ユーザーの詳細情報を、多数の競合DSPに通知します。DSPはそのユーザーデータを確認し、リターゲティングの場合には、そのユーザーが過去に広告主と一緒に作成したセグメンテーションリストに含まれているかどうかをチェックします。

そこから、仮想オークションが開始され、DSPは広告インプレッション(=ユーザーに広告を見せる機会)に対して入札します。入札オファーには、DSPがそのユーザーに最も効果的だと判断した広告主の広告クリエイティブとコピーが含まれます。この入札はすべてリアルタイム入札(RTB)を通じて行われ、プロセス全体は高度なアルゴリズムによって制御され、ほんのコンマ数秒のうちに完了します。

STEP 5:広告枠の獲得と配信

DSPは、適切な金額で入札して広告枠を獲得しつつ、ROASを最大化することを目指します。オークションに勝利すると、SSPが該当ユーザーに広告を表示します。広告をクリックするかどうかはユーザーに委ねられます。ユーザーが広告リンク(つまりディープリンク)をクリックすれば、アプリ内の指定ページへ遷移します。

STEP 6:計測とアトリビューション

広告が表示・閲覧・クリックされた情報はDSPに送られ、さらにMMPに転送されます。MMPは、クリック後にユーザーがアプリ内で実行したイベント(リエンゲージメントを含む)を追跡し、広告およびDSPに対する貢献をアトリビュートします。

定義されたアトリビューションウィンドウに従い、クリック後のイベントデータが集計・分析・レポーティングされます。なかでも特に重要なのは、ユーザーが広告を通じてアプリとリエンゲージメントした後、どれだけの収益をもたらしたかを把握することです。

4. プライバシーファースト時代のリターゲティング

これまでの章で見てきたとおり、アプリ内リターゲティングは、複数のパートナー間でユーザーデータを共有することによって成り立っています。しかし近年、消費者は自分のデータがどのように使用され、共有されているのかについて、より敏感になってきました。その結果、消費者からのプライバシー保護の要求が高まり、プライバシーファースト時代のリターゲティングが幕を開けました。モバイルデバイスのOSを設計・運用するAppleやGoogleといったテック企業は、こうしたニーズに応えるため、ユーザーのプライバシーを保護する新たな対策を講じています。

ただし、GoogleのAndroidデバイスとAppleのiOSデバイスでは、プライバシーへのアプローチが大きく異なっています。

Androidにおけるプライバシー

Google Advertising ID(GAID)は、すべてのAndroidデバイスに割り当てられている一意の識別子です。GAIDは、ユーザーのアプリ横断的な行動を追跡し、リターゲティングに使用するためのIDとして機能します。現在、Androidユーザーは自らの設定を通じてGAIDを手動で無効化することが可能です。これにより、広告主やDSPはそのユーザーを他のアプリを横断して追跡することができなくなり、個別のリターゲティングやパーソナライズ広告の配信ができなくなります。

しかし、GAIDを無効にするにはユーザー側で設定を変更する必要があるため、実際に無効化するユーザーは少なく、大多数のAndroidユーザーは引き続き広告主によるリターゲティングが可能な状態です。実際、2022年末時点でAndroidは全モバイルOSの72%を占め、1日あたり約2,000億件の入札リクエストの発信源となっていたため、Androidでのリターゲティングは今なお非常に広く利用可能です。

Googleは将来的にGAIDを廃止することを目指しており、現在Remergeを含む業界パートナーとともに、Privacy SandboxというAndroid向けのプライバシーセーフな広告フレームワークを開発中です。この新しい仕組みにより、ユーザーの個人データをデバイスから外に出すことなく、広告主は引き続き効果的なリターゲティングキャンペーンを実施できるようになります。

このプロセスがどのように進むのか、またRemergeがこのソリューション構築にどのように関わっているのかを詳しく知りたい方は、元プロダクトVP (VP of Product) のグヴェン・ソイダン (Güven Soydan) によるインタビューや、シニアプロダクトマネージャー (Senior Product Manager) のラッキー・ハープリー (Luckey Harpley) によるインタビューをご覧ください:


また、RemergeのCEOであるパン・カツキス (Pan Katsukis) が、GoogleおよびAppsFlyerのプロダクト責任者とともに、Privacy Sandboxの構築とテストに関する取り組みについて語っているApptivateポッドキャストのエピソードもあわせてご覧ください。

iOSにおけるプライバシー

2021年、AppleはiOS 14.5のアップデートにあわせて、ユーザープライバシーとデータ保護ポリシーをさらに強化しました。これにより、iOSユーザーは自分が使用するアプリ間の横断トラッキングを許可するかどうかを自ら選択できるようになりました。Appleはこの仕組みをATT(App Tracking Transparency framework)と呼び、ユーザーが新しくダウンロードしたiOSアプリを開くと、トラッキングに関する許諾ポップアップが表示され、アプリ間の横断トラッキングへのオプトイン(許可)/オプトアウト(拒否)が求められます。

この変更により、AppleのデバイスIDであるIDFA(Identifier for Advertisers)は、ユーザーがオプトインしない限り、広告主に提供されなくなりました。結果として、多くのユーザーがトラッキングをオプトアウトしており、IDFAがなければ、DSPや広告主はそのユーザーを他のアプリを横断して特定・追跡することができないため、リターゲティングが実質不可能になります。また、アプリ間での行動データが取得できないため、iOS向けの広告はユーザーごとの高精度なパーソナライズが難しくなります。これにより、市場では「モバイルリターゲティングは終わるのではないか」との見方も広がりましたが、現実はそれほど悲観的ではありませんでした。

iOSにおけるリターゲティングはたしかに影響を受けましたが、トラッキングのオプトイン率はアプリの種類によって20~30%前後で推移しており、依然としてリターゲティングキャンペーンを行うチャンスは残っています。さらに、iOSユーザーはAndroidユーザーよりも平均的に支出額が高い傾向にあるため、対象ユーザー数は少なくても高い収益ポテンシャルを持っています。また、日常的に利用されているiOSの入札リクエストの過半数はIDが有効な状態であり、リターゲティングの実施が可能です。現在では、IDが有効な入札リクエストが1日に約400億件、iOSから発信されています。

Remergeでは、ポストIDFAダッシュボードを通じて、iOSの入札リクエストの件数をリアルタイムでモニタリングすることができます。下図は、2023年時点の入札リクエストデータを示したものです。

iOSのトラフィックが利用可能な状況にある中で、多くのモバイルマーケターはこのチャンスを活かし、既存のiOSユーザーをリエンゲージメントすることで、LTVを最大化し、収益を高める施策に取り組んでいます。

以下に示すのは、AppleのATTフレームワーク実装以降におけるRemergeのパフォーマンスデータです。ご覧のとおり、新しいプライバシー政策の導入後も、モバイルユーザーの広告クリックやエンゲージメントはかつてないほど活発であることが分かります。

5. リターゲティングパートナーを選ぶポイント

リターゲティングのパートナーを選ぶ際、広告主はどこに注目すべきかを知っておくことが重要です。以下では、DSPの価値を評価するうえで検討すべきポイントをご紹介します。

1. 広告在庫のスケールと質

プログラマティックアプリ内広告において、「スケール」とは、DSPがアクセスできる広告在庫の規模を指します。これは、SSPやパブリッシャーアプリから構成されるサプライネットワークを通じて、どれだけ多くの広告枠にアクセスできるかという点を意味します。DSPのリーチが広ければ、そのネットワーク内で自社のユーザーを見つけてリターゲティングできる可能性も高くなります。スケールはしばしば「1秒あたりのクエリー数(QPS)」として表され、DSPが毎秒処理できる入札リクエスト(=広告機会)の数を示します。

また、DSPが質の高い多様なSSPパートナーと連携していることは非常に重要です。これにより、DSPはオーディエンスの属性、OS、広告クリエイティブのメディアタイプ/フォーマットといった豊富なデータポイントをもとに最適化を行うことができます。加えて、広告キャンペーンにおいてさまざまな広告フォーマットや複数のパブリッシャーアプリへのアクセスが可能になるというメリットもあります。スケールが大きいということは、DSPがより多くのオークション結果を観察し、入札の精度と効率をさらに高められるということも意味します。

2. バイイングエフィシエンシー (効率的な買付け)

現在、プログラマティック広告取引の約90%がリアルタイム入札(RTB)を通じて行われているといわれています。高パフォーマンスを誇るDSPは、高度な入札アルゴリズムを備えており、最適な広告枠を可能な限り低価格で買い付ける能力を持っています。スケールとスマートな入札を組み合わせることは、あらゆる広告キャンペーンの成功にとって不可欠です。

DSPは、高度な入札、コンバージョン、クリック予測アルゴリズムによって市場データから学び、効率よく入札し、どの入札リクエストに対しても適切な価格で広告枠を取得します。効率的な入札アルゴリズムを持つDSPであれば、優れたROAS(広告費用対効果)や、クライアントの目標を上回るまたはそれに見合うCPX(アクション単価)を実現した実績のあるケーススタディを提示できるはずです。

3. クリエイティブエキスパート

多くの広告主は自社内で広告クリエイティブを制作し、それをDSPに提出します。しかし、たとえ自社で制作している場合でも、Remergeのような、デザイン経験が豊富で、社内にクリエイティブチームを持つDSPをパートナーに選ぶことには大きな価値があります。広告クリエイティブは各マーケティングチャネルに合わせて最適化されるべきであり、アプリ内広告も例外ではありません。優れたクリエイティブの知見を持つDSPは、ベストプラクティスのアドバイスを提供し、リソースが不足しているときにもサポートしてくれます。さらに、キャンペーンのテストデータに基づいて、広告フォーマットやデザインの最適化についても的確なガイダンスを提供してくれるでしょう。

4. インクリメンタリティ測定の経験

インクリメンタリティ測定とは、ユーザーを2つのコントロールグループにセグメント化するプロセスです。片方のグループには有料マーケティングキャンペーンを実施し、もう片方のグループには一切のマーケティングコミュニケーションを行いません。この実験結果により、複数の有料広告チャネルがユーザーに与える影響を明確に区別することができます。たとえば、ある期間中のアプリ内購入を計測することが目的であれば、広告を配信しなかったグループ(ターゲット外)の総購入数はオーガニックコンバージョン率を反映し、広告を配信したグループ(ターゲットグループ)の総購入数は有料キャンペーンによるコンバージョン率を示します。このようにして、特定の広告チャネルの全体的な有効性を評価することができ、より的確な広告費の意思決定につなげることが可能になります。

近年では、アプリマーケティングキャンペーンの真の効果を評価する手法として、インクリメンタリティの採用が進んでおり、この流れは今後も続くと見られています。これは、AppleのIDFAやGoogleのGAIDの段階的廃止に伴い、広告主がアトリビューションの計測および検証方法を多角的に模索しているためです。したがって、広告キャンペーンの効果を理解し、最適化するうえでも、インクリメンタリティ測定の経験を持つDSPを選定候補に含めることは非常に有益です。

5. プライバシーとデータセキュリティ

スマートフォンユーザーの間で高まるプライバシー意識に対応する形で、GDPR(欧州)やCCPA(米国)といった法制度が整備されました。個人データの不適切な取り扱いには多額の罰金が科される可能性があるため、信頼できるDSPと連携することが不可欠です。特に、GDPRにおける「データプロセッサー」の役割を果たすDSPであれば、データの保護レベルが最も高く、他目的でのデータ利用を防ぐとともに、安全性とセキュリティを保証してくれます。

6. セルフサービス vs マネージドサービス

アプリ内広告においては、セルフサーブプラットフォームを提供するDSPもあれば、マネージドサービスを提供するDSPもあります。セルフサービス型のDSPでは、広告主自身が広告キャンペーンを管理するためのプラットフォームが提供されます。このプラットフォーム上で、ターゲティングの条件を自ら設定し、その後パフォーマンスを監視し、必要に応じて最適化を行うことになります。一方、マネージド型のDSPは、これらの詳細な作業を広告主に代わって実施します(もちろん、広告主のチームと相談しながら進行します)。

どちらのサービスにもそれぞれ利点があります。マネージドDSPを利用すれば、社内リソースの負担を抑えることができるうえ、プログラマティック広告の豊富な経験を活かしてキャンペーンをより効果的に最適化してもらえます。一方で、セルフサービスDSPを活用すれば、社内チームがセグメンテーションや広告配信の最適化について実践的な経験を積むことができます。DSPを選定する際には、どちらのアプローチが自社のニーズに最も適しているかを見極めることが重要です。

6. プログラマティックリターゲティング広告を始めるには

多くのアプリマーケターは、リターゲティングのインスピレーションを得るために類似または競合のビジネスを参考にしますが、それが必ずしも最良の出発点とは限りません。ベンチマークデータやインサイトはある程度の指標にはなりますが、アプリごとに状況は異なるため、自社アプリに特有のパラメータに基づいたリターゲティング計画を立てることが重要です。

リターゲティング広告配信を開始する前に必要な主なステップは以下のとおりです:

  • リターゲティング全体の目標を設定する
  • MMPおよびリターゲティングパートナーとの技術的要件を整える
  • KPIおよび計測指標を定義する
  • クリエイティブアセットを準備し、予算を設定する

それぞれの項目を以下で詳しく見ていきます。

1. リターゲティング全体の目標を設定する

リターゲティングキャンペーンを始めるにあたって最初に行うべきことは、達成したい目的を明確にすることです。代表的な目標の例は以下のとおりです:

「リテンション率を向上させたい」
平均して70%以上のユーザーがアプリから初日で離脱すると言われています。マーケティング予算の一部をリターゲティングに割くことで、離脱率を下げ、価値の高いユーザーをアクティブな状態で維持することができます。

「初回購入のコンバージョンを促進したい」
UAキャンペーン後に自然と初回購入が発生することもありますが、多くの場合、新規ユーザーの大半はすぐには購入に至りません。新規ユーザーをリターゲティングすることで、購入やサブスクリプション完了の確率が上がることが研究でも示されています。

「既存ユーザーから追加購入を得たい」
UAキャンペーンは主にインストールや登録など初期ステージを対象としていますが、リターゲティングはその後のステージに着目し、長期的なLTVの最大化を目指します。すでに購入経験のあるユーザーに再購入を促すことも可能です。

「アプリダウンロード後にアカウント登録を完了させたい」
アプリをダウンロードしても登録に至らないユーザーもいます。こうしたユーザーに再アプローチし、登録を完了してもらうことは重要です。登録しない限り、アプリの使用や購入といった次のアクションにつながらないためです。

2. MMPおよびリターゲティングパートナーとの技術的要件を整える

目標を決めたら、MMPおよびDSPとの間でキャンペーンに必要な技術設定を行います。

A. イベントストリームの設定
イベントストリームは、アプリからのリアルタイムデータをリターゲティングパートナーに提供する仕組みであり、これによってパートナーはユーザーにパーソナライズされた広告を配信できるようになります(詳細は第3章参照)。そのためには、すべてのアプリ内イベントデータの転送を有効化し、選定したリターゲティングパートナーへ送信できるようにする必要があります。アプリ内イベントの転送は、イベントトラッキング用のAPIを使用するか、MMPのプラットフォームを通じて実行することができます。

B. 過去のユーザーデータの提供
効果的なリターゲティング広告配信の立ち上げには、十分な量のアプリ内イベントデータへのアクセスが不可欠です。もし、イベントデータ転送を最近になって有効化したばかりであれば、リターゲティングパートナーにとっては、過去に発生したユーザーイベントのリストが非常に有益となります。可能であれば、アプリに蓄積された過去のユーザーデータをリターゲティングパートナーと共有しましょう(推奨される期間:直近3ヶ月間)。

C. トラッキング可能なディープリンクを作成
ディープリンクとは、ユーザーをアプリ内の特定のポイントへ直接遷移させるリンクのことで、その表示内容は、アプリ内での過去のアクティビティに基づいてそのユーザーにパーソナライズされたものや、関連性の高いコンテンツになっています(詳細は第3章参照)。たとえば、ゲームアプリの広告にディープリンクを設定し、ユーザーを最後にプレイしていたステージに直接誘導するケースがその一例です。

このようなディープリンクを使用すれば、ユーザーがアプリのトップ画面から手動で第3ステージまでナビゲートするような広告よりも、迅速で効率的なユーザージャーニーを提供できます。さらに、ディープリンクには広告クリックの時刻やトラフィックソースを示すタグ/パラメータを付加することで、トラッキング可能な形式にすることができます。MMPはこれらのトラッキング可能なディープリンクを使って、コンバージョンの計測とアトリビューションの判定を行います。これらのディープリンクは、リターゲティングパートナーにも共有する必要があります。パートナーはそれを活用して、広告配信のパフォーマンスを追跡・分析します。

3. KPIおよび計測指標を定義する

目標を設定し、技術的なセットアップが完了したら、次に取り組むべきは、リターゲティングキャンペーンの効果を計測するための指標とKPI(重要業績評価指標)の確認です。これらのKPIは、選定したリターゲティングパートナーと協議のうえで定義することができ、あわせて月次予算の決定や、ターゲットとする地域・国の選定などもこの段階で行います。

以下に、リターゲティング広告配信でよく使用される代表的な指標とKPIの内訳をご紹介します:

4. クリエイティブアセットを準備し、予算を設定する

広告を配信する前に、リターゲティングパートナーにクリエイティブアセット一式を提供する必要があります。これには、利用可能な広告枠の多様性に対応できるよう、複数のサイズやフォーマットで広告を共有することが含まれます。もしこうしたアセットをまだお持ちでない場合は、リターゲティングパートナーとともにクリエイティブ戦略を策定し、ゼロからアセットを構築することも可能です。

たとえばRemergeでは、アプリが当社とともにキャンペーンを開始するための最低要件として、5つのアスペクト比サイズの静止画像と、ネイティブ広告用の背景画像(およびテキスト)が必要です。ただし、広告タイプやフォーマットにはさらに多くの選択肢があります。動画、HTML、リッチメディア、バナーなどがその例です。どのフォーマットがリターゲティングキャンペーンに最適かについては、DSPパートナーと相談しながら決定することができます。さらに多くの例については、以下の例をご覧ください。

これらすべてのステップが完了すれば、予算を設定し、リターゲティング広告配信を正式に開始できる状態となります。

7. 広告クリエイティブのベストプラクティス

リターゲティング広告配信向けに自社でクリエイティブアセットを制作する場合、モバイルOSの種類にかかわらず、まず押さえておくべき基本要素があります。それは、デザインとフォーマット、コピー、そしてバリュープロポジションです。

1. デザインとフォーマット

モバイル広告は、一目で内容が伝わることが重要です。視認性の高い色のコントラストや、目立つCTA(行動喚起)ボタンなど、明快でシンプルなデザイン要素を取り入れることが求められます。また、広告のデザインは、ユーザーが広告をクリックした後に遷移するアプリ画面と視覚的に一貫性を持たせることが重要です。これにより、広告体験全体の統一感が生まれます。

リターゲティング広告配信では、頻繁に使い回されている広告アセットを流用するのではなく、リターゲティング専用にカスタム制作されたクリエイティブを使用するべきです。そうすることで、広告疲れを防ぎ、パフォーマンスの最適化が図れます。複数フォーマットの広告をいくつか用意し、A/Bテストを実施することで、どのクリエイティブ、どのフォーマット、どのメディアタイプが最も高いコンバージョンをもたらすかを見極めることも有効です。

左の例はユーザー獲得(UA)広告で、評価、コメント、プレビューなど、アプリのダウンロードを連想させるビジュアル要素が含まれています。一方、右の例はリターゲティング広告で、アプリ内のインターフェース要素が使用されています。

2. 広告コピーと配置

広告を作成する際には、メッセージに説得力があるだけでなく、視覚的な表示方法としても機能的なコピーを使用することが重要です。コピーは短く、わかりやすい表現であることが望まれます。以下では、広告枠、CTAボタン、メッセージの使い方を工夫することで、広告クリエイティブをより目を引くものにする2つの例を紹介します。

左上の例では、フルスクリーン広告が広告枠を戦略的に活用しており、CTAが明確かつ直感的に理解できる表現になっています。一方、右の例では、同じキャンペーンの中のより小さなバナー型広告が示されており、限られた広告枠に合わせてコピーが短縮されています。

3. バリュープロポジション

強力なバリュープロポジション(またはバリューエクスチェンジ)は、ユーザーを引きつける最も効果的な方法のひとつです。広告の目的を達成するうえでの根拠を明確に考えること、そしてターゲットとなるオーディエンスの動機や心理状態を理解することが極めて重要です。ユーザーにとって実際に価値のあるものを提供し、さらにそれを特別感や緊急性(例:期間限定オファー、特典付きキャンペーン、割引、新コンテンツ・新機能など)を持たせて提示することで、広告へのクリック率を高めることができます。下の例は、ユーザーにアクションを促すためにインセンティブを与える方法を示しています。

8. セグメンテーションのコツと戦略

セグメンテーションとは、ユーザーを共通の属性やアプリ内での特定の行動に基づいて、複数のグループ(セグメント)に分類するプロセスです。こうして分けられたグループごとに、関連性の高い広告やメッセージを個別に配信することが可能になります。ユーザーのセグメンテーションについては、リターゲティングパートナーと協力して設計することができ、各セグメントに対する広告パフォーマンスを計測することもできます。得られた結果は、今後のキャンペーンの調整・最適化に活用することができます。

よく使われるセグメンテーションの例には、以下のようなものがあります:

1. 初回購入ユーザー

このセグメントは、アプリをインストールしたものの、まだアプリ内で購入を行っていないユーザーを指します。この場合の広告の目的は、ユーザーに初回購入を促すことです。これを実現するためには、インセンティブ、オファー、製品の魅力的な機能などを提示し、ユーザーにコンバージョンしてもらうよう働きかけます。

2. アクティブユーザー(またはアクティブな購入歴のあるユーザー)

過去30日以内に少なくとも1回のアプリ内購入を行ったユーザーを指します。このセグメントは、現在も関心を持っている「ウォームユーザー」とみなされます。このセグメントにおける広告の目的は、ユーザー1人あたりの購入頻度を増やすことです。たとえば、フードデリバリーアプリで、通常月に1回注文するユーザーがいれば、注文頻度を増やすことが目標となります。

3. 離脱ユーザーまたは休眠状態の購入ユーザー

このセグメントは、一定期間アプリを利用していないユーザーを指し、たとえば最後の注文・購入から30日以上経過しているといったケースです。これらのユーザーは徐々にアプリから離れつつあり、リターゲティングを行わなければ、最終的にアプリから離脱する可能性が高いと考えられます。このセグメントの目的は、離脱傾向にあるユーザーを呼び戻し、再度購入を促すことです。これにより、ユーザーがアプリの存在を忘れたり、アンインストールしたりするのを防ぐことができます。

9. ダイナミックプロダクト広告によるパーソナライズ

ダイナミックプロダクト広告(DPA)は、ユーザーがアプリ内で行った行動に基づいて、パーソナライズされた広告コンテンツを表示する仕組みです。ユーザーごとに広告全体がパーソナライズされるだけでなく、広告クリエイティブ、コピー、CTAのメッセージといった個別の要素までもが最適化される点が特徴です。DPAは、特にさまざまな商品を販売するeコマース系アプリやショッピングアプリにおいて高い効果を発揮します。

ディープリンク付きのDPAは、ユーザーをアプリ内の特定の目的地に直接誘導するのにも役立ちます。たとえば、ユーザーが商品をカートに追加したまま購入していない状態であればそのショッピングカートへ、あるいは過去に閲覧した商品を表示するために商品カタログの該当セクションへと誘導することが可能です。これらの広告は、テンプレートに商品カタログから画像や商品情報を自動的に差し込む形で、リアルタイムに生成されます。

以下に、ダイナミックプロダクト広告が作成・配信されるまでのステップを紹介します:

1. アプリからイベントデータ転送を有効にする(3章STEP 1)

リターゲティングパートナーは、あなたのアプリから送られるデータストリーム(イベントストリーム)をもとに、ユーザーが商品をどのように閲覧・利用したかの情報を収集します。

2. リターゲティングパートナーが広告を作成する

リターゲティングパートナーは、イベントストリームから得られた情報を活用して、個々のユーザーに最適化された魅力的な広告を作成します。これは、商品フィード内のアイテムに基づいて行われ、各ユーザーごとにカスタムHTML広告が生成されます。

3. 提供されたディープリンクを挿入する

ユーザーがDPAに表示された商品をクリックすると、あらかじめ提供されたディープリンクを通じて、アプリ内の該当する商品ページへと直接遷移します。

10. Remerge各拠点のリーダーによるリターゲティングのインサイト


「バリューエクスチェンジを構築することは、これまで以上に重要になっています。モバイルマーケターは、ユーザーにアプリへ戻ってきてもらう方法を見つける必要がありますが、あまりにも押しつけがましくなると、広告トラッキングをオプトアウトされたり、アプリをアンインストールされたりしてしまう危険があります。リターゲティングとは、ユーザーベースをより深く理解し、そのインサイトを活用していく取り組みなのです。どうすれば、彼らにより訴求力のあるメッセージを届けられるでしょうか?動画とバナー、どちらにより反応してくれるのでしょう?広告疲れは起きていませんか?コンテンツの内容を変えるタイミングではないでしょうか?そうすることで、ユーザーがアプリに再び関心を持ち、戻ってきてくれるかもしれません。」


「パフォーマンスマーケティングはコンバージョンに重きを置き、ブランド認知には関係ない、そう誤解している人は多いです。私たちは、既存ユーザーベースやファーストパーティデータの価値を軽視するアプリマーケターをよく目にします。しかし実際には、リターゲティングによって休眠ユーザーの再活性化や、ブランドリコールを通じた再インストールの促進が実証されています。ブランド要素をリターゲティング広告に組み込むことで、アプリ施策全体の効果を最大化すべきです。」


「日本では、あらゆる業界でデジタルトランスフォーメーション(DX)が大きなトレンドとなっています。これに伴い、スマートフォンアプリ市場全体も着実に成長を続けています。AppApeの2021年のデータによると、アプリの利用に関するさまざまな指標が過去最高を記録しました。日本国内のアプリ全体の月間アクティブユーザー数(MAU)は34%増加し、1人あたりの月間平均アプリ利用数は40に達し、2020年の36から増加しています。また、アプリ利用の1日あたりの平均時間は4.8時間に増加し、2020年の4.6時間から上昇しています。

こうした数字はアプリ市場の成長を示す一方で、ユーザーのスマートフォン上の限られたスペースと時間をめぐる競争が激化していることも意味しています。したがって、ユーザーをリエンゲージメントし、高いリテンションを確保することがかつてないほど重要になっています。スマートフォン内でのスクリーンタイムと広告枠をめぐる争いは今も続いており、その結果として、これまでアプリリエンゲージメントを想定していなかった業種でも、成長戦略の一環としてリターゲティングを検討するケースが増えているのです。」



「私たちは、一部のアプリがアプリ内購入を促すために、より多くのインプレッションやクリックを求めているというケースを見てきました。しかし、アプリ内で異なるオーディエンスに対してセグメンテーションやターゲティングを行う計画を持っていないという状況も少なくありません。アプリビジネスは、単にトラフィックを増やす手段としてではなく、モバイルマーケティング活動の戦略としてリターゲティングを捉えるべきです。

2021年にAppleがATTフレームワークを導入したことで、多くの広告主がAppleデバイス向けのリターゲティング予算を削減しました。しかし、2022年時点では、中国のクライアントの約40%がiOSキャンペーンの再開を検討しています。その背景には、ユーザーの約20%がIDFAを提供しているという実態があります。」

11. まとめ

全体として、アプリのグロースとモバイルマーケティング戦略の成功を実現するには、アプリ内リターゲティングが不可欠です。UA(ユーザー獲得)キャンペーンは新規ユーザーの獲得に貢献しますが、インストール後のリテンションと収益を促進するにはリターゲティングが必要です。リターゲティングへの小さな投資が、長期的には大きな成果につながるのです。

また、適切なパートナーとの連携も成功の鍵となります。技術的なセットアップ、オーディエンスのセグメンテーション、クリエイティブの支援、そして戦略策定をサポートできる、経験豊富かつプライバシーに配慮したDSPとパートナーを組むことが重要です。そうすれば、リターゲティング広告はユーザーに届くだけでなく、リエンゲージメントとコンバージョンにもつながります。

Remergeがこれらの目標達成にどう貢献できるか知りたい方は、ぜひこちらからお問い合わせください